北杜夫フェア

●マンボウ氏の暴言とたわごと
北 杜夫
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◆ 前半は数行のエッセイとも短文とも言えない文が並んでいる。暴言とたわごとというタイトルであるが、「作家というのは他人の小説を案外読まぬよ うだ。」 といいながら送られてきた村上春樹氏の短編はすばらしいものであったとさりげなく褒めていたりする。もはや歌舞伎や能を紹介する時代ではない、とも書いて いた。
一方で、旧知の佐藤愛子さんネタ(悪口)でさんざんページを割いている。故有吉佐和子さんという懐かしい方についてもほんのすこしである が書かれていた。もうちょっと書いて欲しいぐらいだった。躁期における、ブルックシールズに関する顛末も面白い。さらに、手塚治虫さんとの交友についても 触れられている。 そして、この本は平成3年の単行本であるがゆえなのか、最後のあたりでは、昭和を振り返るともいうような中身になっている。ご自身のこと、天皇陛下のこと など、前段とはうって変わってしんみりとさせる。マンボウ氏のエッセイとしては、何だか最終章のような雰囲気がして少し寂しい感じがした。

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●マンボウ的人生論―若者のためのエッセイ集
北 杜夫
4881760688

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●マンボウ愛妻記
北 杜夫
4062683504

◆自分の妻が良妻か悪妻か?偉人と悪妻は切っても切れない関係というが、才能がないと言う著者の半世紀にわたる配偶者とのやりとりが氏一流のエッセ イとし て綴られている。 筆者は慶応大の医局で助手をやっていたころトーマス・マンを崇拝し、ドイツへ行こうと試み、そして水産庁の漁業調査船の船医として渡独を果たす。このとき の体験を基に「どくとるマンボウ航海記」を著しベストセラーとなる。氏はそこで妻と出会うのであるが第一印象は怪しからん女だったそうである。
当初は兄の開業した医院で居候し診察をしていたという。なだいなだ氏が医局の後輩というのを初めて知ったが、その当時のエピソードもあって面白い。また、同人をやっていたそうであるが、その中で佐藤愛子さんがいたというのも新たな発見であった。
現在で言う不倫体験や数々の見合い体験も、面白おかしく書いてありどんどん引き込まれる本だった。
当然ながら、氏の周りには多数の作家がいる。麻布中学の先輩の吉行淳之介さんやら宮脇俊三さん(どくとるマンボウ航海記編集者)など。「どくとるマンボウ」というタイトル秘話もあり大変楽しめた。
妻になる方のドイツ語の発音に惹かれたそうである。また、性格は慎ましく穏やかだったことが気に入ったとのこと。(結婚後大きく変身したそうであるが)
曰く「結婚には愛も大切だけど打算や駆け引きという冷静な視点も大事だとつくづく思うのである。」なるほど。披露宴には三島由紀夫もいたらしい。三島氏は他の人の祝辞に高笑いしたとのこと。
氏の母親は妻は氏の母親に対して、氏の躁病による行状について訴えたところ、母は茂吉の父(著者の祖父)から言われた言葉をもとに「妻になったのではな く、あなたは看護婦になったつもりでやってちょうだい」と語って聞かせたそうである。そして、妻は「看護婦さんにはなります。そして婦長になります。」と 氏に対して言ったそうである。
最後の章で「躁うつ病は過去と未来が交錯する」としたタイトルがあり、「躁は未来に向かって突き進み、鬱は過去へ向かって沈潜する。」とあった。だから、氏は未来も過去も分かるのだと。このフレーズ、著者の長年の経験とその才能から生み出された名言であると思う。

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